ハリネズミの血尿・子宮疾患
2016.9.8 -[その他・ハリネズミの診療記録・飼い主様お役立ち情報]
こんにちは、井本稲毛動物クリニックの井本です。
少しずつではありますが今後、ハリネズミの診療記録を挙げていこうと思っています。
本日は1歳7ヶ月の女の子、ツンちゃんのお話です。
当院を受診する2日前より血尿が出ているとのことで来院です。
実はハリネズミの女の子で「血尿」は膀胱や腎臓などの泌尿器疾患ではなく、子宮からの出血がほとんどです。
まずは検査を…ということでレントゲン写真を撮りました。
腹部に巨大な「何か」が観察できます。
追加でおこなった超音波検査の結果からも子宮の病気が強く疑われたため、
飼い主様とご相談のうえ、後日に手術をおこなうことになりました。
腕から血管確保をおこない静脈点滴を実施します。
お腹を開ける手術、出血が予測される手術では血圧の低下に対応するため血管確保は欠かせません。
ガス麻酔、注射での鎮痛・鎮静剤を組み合わせて手術の準備をおこないます。
下腹部が異常に膨らんでいます。腹筋のすぐ真下に大きく腫れた子宮がいるため
開腹する際、慎重にメスを入れていかなければいけません。
※血が苦手な方のために画像は編集しております。
開腹すると巨大な塊が飛び出してきました。
体内で周りの癒着もひどく、血管も豊富なため出血に注意しながら摘出手術を進めていきます。
一部分のみかろうじて原形をとどめる子宮の腫瘍が摘出できました。
その大きさは約6cm。ハリネズミのお腹の中にとってはかなり巨大な塊です。
お腹の傷を縫って手術は無事に終了。
小さい体で本当によく頑張ってくれました。
抜糸はしなくても大丈夫な縫い方でお腹を閉じています。
後日エキゾチックアニマル専門の病理診断医に摘出した腫瘍を診ていただきました。
その結果は悪性の腫瘍でした。
ツンちゃんの子宮の腫瘍の摘出は完全であったものの、今回の腫瘍は悪性度が高く、
脈管内浸潤(がん細胞が根を降ろしてしまうこと)も伴っていたため今後も定期的に検診が必要になると思われます。
ハリネズミの女の子で血尿が出た時は早めに動物病院へ連絡してください。
ツンちゃんは血尿が出たあと比較的早くに飼い主様が当院へ連れてきてくれました。
あと数週間〜1ヶ月も遅かったら非常に危険な状態に陥っていたと思われます。
血液検査、レントゲン検査、超音波検査も可能ですので
ハリネズミの女の子は若くても1年に1回は健康診断を受けましょう。
井本稲毛動物クリニック
井本 暁
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