フェレットの心不全とインスリノーマ
2017.4.30 -[その他・フェレットの診療記録・飼い主様お役立ち情報]
こんにちは、井本稲毛動物クリニックです。
ありがたいことに当院は近隣の先生方からもフェレットの診療をご紹介いただくケースも少なくありません。
以前よりご要望をいただいておりましたフェレットの診療記録も少しずつ挙げていこうと思います。
ペットの高齢化は犬・猫共に最近よく耳にしませんか?
実はフェレットも例外ではありません。
今回ご紹介するのは7歳のフェレットちゃんです。
元気も食欲も無くお腹が腫れている、貧血、チアノーゼ(粘膜の色が紫色になってしまう状態)が出現しているとのことで、近隣の動物病院からご紹介されての来院でした。
胸の真ん中にある心臓の影は明らかに大きくなっており、肺には白い曇りも確認されます。
心臓の超音波検査によって心臓弁膜症が確定しました。
また、追加で実施した血液検査によってインスリノーマ(膵臓の病気によって低血糖を生じてしまう病気)も併発していることがわかりました。
高齢のフェレットでは、しばしばこのように複数の病気を併発していることがあるため注意が必要です。
フェレットの心臓病治療の基本はお薬ですので、強心剤、降圧剤、そして利尿剤を組み合わせて呼吸と元気が改善するかどうかを診ていきます。
幸い、お薬の反応は良く、再診の時には元気になってくれました。
利尿剤の影響で喉が渇いています…
紫色だった鼻の頭もピンク色に戻ってくれました。
元気も食欲も戻ってくれて一安心だったのですが、初診から3〜4ヶ月後には腹水が溜まるようになり、5〜6ヶ月後には胸水が溜まるようになってしまいました。最初は左心不全だったのが徐々に右心不全も起こり始めたのです。
同時にインスリノーマも進行を始めたので血糖値を維持するお薬を追加します。
胸水が溜まって息が苦しい時のレントゲン写真です。
初めて来た時とは違って、肺の領域が真っ白になってしまいました…。
胸に溜まった水は、針で刺して抜かなければいけません。
抜けば呼吸は楽になりますが、時間が経つとまた水が溜まってしまって息が苦しい、という状況が出てしまいました。
心臓とインスリノーマのお薬は継続し、ご家族には自宅で設置できる酸素室をレンタルしてもらい、病院には2週間に1回程度胸水を抜く…といった治療をおこなっていきます。
フェレットの心臓病もインスリノーマも、年齢を重ねるごとに発症するリスクが高くなります。
血液検査やレントゲン、超音波検査などの健康診断で早期に発見することが可能ですので、おうちのフェレットちゃんが4歳、5歳頃を迎えるようになってきたらぜひ健康診断を受けに動物病院にいらしてください。
井本稲毛動物クリニック
井本 暁
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