フェレットの膿胸
2017.11.24 -[その他・イベントのお知らせ・フェレットの診療記録・飼い主様お役立ち情報]
すっかり気温が下がって冬らしくなってきましたね、
おはようございます、井本稲毛動物クリニックです。
今回ご紹介するフェレットの症例は「膿胸」です。
「のうきょう」と読みます。
胸の中に膿が溜まってしまう病気のことです。
ちなみに以前、脱臼の症例をお伝えしましたが、整形疾患と同様にフェレットでは呼吸器の病気もそんなに多くありません。日々の診察で遭遇するのは鼻炎や気管支炎程度です。
胸の中に膿が溜まる事態というのは何らかの腫瘍も疑わないといけないのですが…。
呼吸困難を主訴に来院されたフェレットは4歳の男の子。
手早くレントゲンを撮ってみると…ぞっとするほど真っ白な肺が写りました。
この写真からは胸水といって、胸に水が溜まっているサインが診て取れます。
急いで胸に針を刺して中に溜まった液体を吸引しなければなりません。
酸素を吸入させながら、針を肋骨の隙間を縫って注意深く刺します。
胸の中は心臓や肺など重大な臓器が詰まっていますので、安全に処置をおこなう必要があります。
抜けた液体の量はなんと160ml…。
液体の性状を検査することでようやくこの時点で「膿」であることが判明しました。
顕微鏡で細胞を調べても腫瘍細胞は見つからなかったのです。
4歳といえば胸の中に腫瘍ができていても不思議ではないのですが…とにかく膿でした。
細菌もどっさり確認されたので抗生物質の内服がこれから必要となります。
膿を調べてみたところ、培養した菌は私たちがよく使う抗生物質に対して耐性を持っていました。
いわゆる「耐性菌」という菌です。
これを調べずに漫然と抗生物質を使い続けると一向に良くならない…むしろ悪化していくという事態も可能性として出てきてしまいますので、膿を調べるのはとても大事なことなのです。
何度か胸に針を刺して洗浄が必要でしたが、幸いなことに良くなってくれました。
多頭飼育されておられたので、もしかすると同居のフェレットちゃんの咬み傷が原因かもしれません。
犬や猫ももちろんですが、フェレットなどのエキゾチックアニマルが呼吸困難を起こしているときは本当に緊急事態ですのですぐに動物病院を受診してくださいね。
井本稲毛動物クリニック
井本 暁
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