ハリネズミの針のお話
2018.7.5 -[その他・ハリネズミの診療記録・飼い主様お役立ち情報]
観測史上最速の梅雨明けとなったようですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
井本稲毛動物クリニックです。
本日は7月7日に発売される書籍
『ハリネズミの“日常”と“ホンネ”がわかる本』
の書籍監修の業務に加えて、春は動物病院の繁忙期とも重なり当院のブログがすっかりご無沙汰となってしまいました…ハリネズミの書籍発売に併せまして、貴重な症例の紹介を今後も少しずつさせていただければと思っています。
本日はその前に…
ハリネズミの象徴でもある、針のお話をさせてください。
ハリネズミの針は、毛や爪と同じケラチンというタンパク質で作られています。
体毛が進化の過程で針に分化していったようなのですが、とにかく本質は毛と一緒です。
部屋をお散歩させたあと、何気なく部屋のなかを歩いていると突然足の裏に激痛が。
抜け落ちていた針を踏んでしまった…なんてのはハリネズミあるあるですよね。
そこでどれだけ鋭いのか、顕微鏡で確認してみました。
40倍の顕微鏡での拡大写真です。
これだけだとわかりにくいかと思いますので比較対象を並べてみました。
左から順に、
注射の針(トップ注射針 動物用25G)。
ハリネズミの針。
犬の椎間板ヘルニアなどの鍼治療に用いる針(セイリンNo.3)。
3つを並べて拡大してみました。
それがこちらです。↓
左の注射針と見比べても遜色ないほどの鋭さがおわかりいただけるかと思います。
踏んでしまって、たまたま針の向きが悪ければ刺さるはずです。
これだけ鋭ければ、人間の皮膚にも刺さるのも不思議ではないですね。
ハリネズミの針は注射の針と違って弾力があります。
この軽くて丈夫なうえに弾力性を兼ね添えているのは、上の拡大写真のように
薄い壁で隔てられた小さな部屋状の構造物が何層にも重なっているからです。
驚きですね。
さて、そんな針ですが。
細い針。
ねじれた針。
艶の無い針。
そんな美針とはいえないような針を持つ子を診る機会が増えてきました。
病気か?と問われると、どちらかといえばノーです。
食事の内容に問題がある子にこのようなトラブルが多いと感じています。
針だけではありません。ダニもいない、カビもいないのにフケがでて体を痒がる…。
こんな症状はおうちの子に当てはまりませんか?
それはもしかすると「動物性たんぱく質」の不足かもしれません。
食事の内容を改善、見直しすることで劇的に症状が良くなることがあります。
繰り返しますが「ハリネズミの針」は毛や爪と同じく、たんぱく質で作られています。
良い材料がなければ健康な針を作ることはできません。
重大な病気、とは言い難い症状ですが困った症状のひとつとして、もしもご心配ならば受診ください。
次回からは中〜高齢ハリネズミに多い「癌」の症例を、飼い主様の許可をいただいて写真を交えて少しずつお伝えしていきたいと思います。
井本稲毛動物クリニック
井本 暁
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