ハリネズミの脾臓腫瘍摘出手術と卵巣子宮摘出手術
2017.1.27 -[その他・ハリネズミの診療記録・飼い主様お役立ち情報]
こんにちは、井本稲毛動物クリニックです。
今回は大手術を乗り切ってくれたハリネズミの女の子をご紹介します。
※途中で臓器の写真が出てきますので苦手な方はご覧になるのを控えてくださいね。
約1ヶ月前から食欲が落ちている…という主訴で2歳10ヶ月の子が来院されました。
もうすぐ3歳…。
色々な原因で食欲がなくなりますので幅広く検査をおこなうことになりました。
レントゲン検査で中腹部に腫瘤の影が見えます…。
続いて超音波検査を実施しました。
検査の結果からは脾臓という臓器から発生する腫瘍の可能性が強く疑われました。
血液検査の結果、白血球も高くなり、貧血も見られます。
幸いにも肝臓や腎臓の数値は問題なかったため、なんとか手術は耐えられると思われました。
飼い主様と相談の結果、
「脾臓は完全切除が可能な臓器であること」
「脾臓はなくなっても他の臓器が脾臓の役割を担ってくれること」
これらをお話しした結果、リスクも納得のうえで後日手術をおこなうことになりました。
とりあえずは抗生剤や止血剤、免疫力を高めるために動物用漢方薬を処方してその日を待ちます。
手術当日。
足から静脈点滴をおこなうための血管確保をおこない、麻酔のモニターを装着してお腹の毛刈りを終えたところです。
…もうすでにお腹の皮膚から脾臓が透けて紫色に見えるのがおわかりでしょうか。
脾臓は血管が何本も走っている臓器ですので、1本1本血管を結んで確実に止血しながら手術をおこないます。
犬や猫と違ってその大きさは小さく太さも細いですが、
ドクドクと拍動して力強く全身に血液を送っているのが感じられました。
実は手術を待っている間にこの子は血尿が出てしまいました。
ハリネズミの女の子で血尿とくれば、まず間違いなく子宮からの出血ですので同時に卵巣子宮も摘出することになりました。放っておけば子宮が癌化してしまうからです。本当は1分でも早くお腹を閉じて麻酔を終わらせたいところですが、脾臓を無事に摘出し終えたら今度は卵巣と子宮を大急ぎかつ慎重に摘出します。
手術は無事に終了し、麻酔から覚めると自ら点滴の管を噛んで外そうとする元気っぷり…。
痛み止めと抗生剤を処方して、無事に退院することができました。
脾臓と卵巣・子宮を病理検査に提出して後日帰ってきた結果は悪性のものでした…。
脾臓に見つかった腫瘍細胞が、なんと片側の卵巣にも転移していたのです。
定期検診を続けながら今後はステロイド剤を主軸に置きつつ、
本人の免疫力や抵抗力を少しでも高めるために「食用蟻」が配合された動物用漢方薬を併用していきます。
エキゾチックアニマル×漢方薬
個人的にはかなり効果的と感じています。
手術を終えて約1ヶ月が経ちますが体重も少し増え、元気にしてくれています。
こんなに嬉しいことはありません。次回の再診を楽しみにしています!
井本稲毛動物クリニック
井本 暁
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