ハリネズミの体表腫瘍
2017.2.21 -[その他・ハリネズミの診療記録・飼い主様お役立ち情報]
こんにちは、井本稲毛動物クリニックです。
暖かくなったと思ったらまた寒くなったり…春が来るまではもう少し寒暖差が激しい日が続きそうですが、
暖かくしてお過ごしでしょうか?
今回ご紹介するのは、1歳9ヶ月の女の子 。
ハリネズミの体にできた「イボ」です。
昨年末から背中に大きな黒いイボができているのに飼い主様が気づきました。
本人は痒みもなく一切気にしていないとのことです。
確かに黒い塊がそこにはありました。
周りの針は黒い塊に押されたためか、抜け落ちています。
周囲の皮膚は赤くなってはおらず、確かに見た目はあまり痒そうではありませんでした。
レントゲンを撮影してみると…バンザイした写真ですが、画像の右側脇の下あたりに白く突起状に見える部分があります。見た目以上に「根」が深いのがわかりますね。
外側から見える黒い塊は、氷山の一角と言ったところでしょうか。
幸い、肺はきれいに写っていますので肺に転移は無さそうでした。
オーナー様と相談の結果、積極的な治療を希望されたため
手術による摘出と病理検査を実施することになりました。
ハリネズミの手術において、腕から血管を確保しての静脈点滴は欠かせません。
出血が多いと血圧が下がってしまい危険だからです。
そもそもハリネズミをはじめ、エキゾチックアニマルの体は犬猫とは比べ物にならないほど小さいため、少しの出血すら許されないのです。
写真は針を刈ったあと。
「ハリネズミの針ってどうやって刈るの!?」と思われましたか?
実は…ハリネズミの針は特殊なバリカンで刈ることができます。
体の表面にできたイボの拡大写真です。
術前検査でのレントゲン写真によって見た目より根が深いので広範囲に針を刈って切除するプランを立てました。
周囲の皮膚を消毒して、いざ手術開始です!
およそ3cmほどの楕円形の腫瘍が摘出できました。
皮下組織の深くまで腫瘍が達していたため、皮膚も広範囲に切除したうえで縫合しています。
摘出した腫瘍は病理検査に提出して結果を待ちます。
手術後の麻酔も順調に目覚めてくれましたので日帰りですみました、がんばったね!
ハリネズミの手術・術後の痛みの管理も重要ですので、抗生剤と痛み止めを処方して傷がふさがるのを待ちます。
数日後にはすっかり良くなり抜糸も終えました。
しかしながら帰ってきた病理検査の結果は「線維肉腫」という悪性のものでした…。
摘出は完全でしたが、この腫瘍、執拗に局所で再発する性格を持っている可能性があるため、
今後も定期的に検診に通ってもらう必要がありそうです。
ハリネズミの体の表面にイボを発見したらできるだけ早くに動物病院へ連れていってあげてください。
体にできてしまったイボは小さいうちに切除するのが鉄則です。
特におなか側のできものは発見が遅くなるケースがあるため、普段のスキンシップも兼ねながら健康状態をチェックしてあげてくださいね。
井本稲毛動物クリニック
井本 暁
このページに記載されました内容および写真は無断転写・転用をお断りします。
著作権は井本稲毛動物クリニックまたは情報提供者に属します。