ハリネズミの心臓病
2017.2.24 -[その他・ハリネズミの診療記録・飼い主様お役立ち情報]
みなさんこんにちは。
なんだかまた寒くなってきました…ハリネズミにとっても人間にとっても早く春が待ち遠しい今日この頃です。
井本稲毛動物クリニックです。
本日はハリネズミの心臓病の例を紹介します。
ハリネズミに心臓病があるの!?と思われるかもしれませんが、実際あるのです。
厄介なのは、聴診器を使って心臓の音を聞くことが性格上、難しい子が一定数いるということ。
全身イガグリで防御されてしまっては胸に聴診器を当ててもしもしするのは大変な作業です。
…しかも、そういう子に限ってもれなく「シューシュー」威嚇してきますので心臓の音がうまく聞き取れません。
初期症状として、
犬は「咳」をします。お散歩中に息があがったりもします。
猫は犬よりも診断が難しく、発見が遅くなるケースがあります。
犬のようにお散歩もしないうえに、1日の大半を寝て過ごしてますからね…ちなみに咳はほとんど出ません。
フェレットも猫と同様に1日の大半を寝てばかりですから発見が遅くなってしまうことがあります。
ではハリネズミは…?
日中はもちろん寝てばかり。
夜になるとハリネズミは活動を始めますが、徹夜してハリネズミにお付き合いするのはお互いとても疲れますよね。
ハリネズミの初期症状は「元気食欲の低下」、「回し車をしなくなる」などが挙げられると思います。
他の病気でもこのような症状が出ますから、こんなサインが出たら心臓病を疑う!といった症状は実は無いのです。
ご紹介するのは、なんとまだ1歳の男の子。
数日前から食欲が無く、運動もしなくなってしまったとのことで来院されました。
なんだか表情に覇気がありません…。
横向きのレントゲン写真です。心臓の影が大きく肥大して、気管を背骨側に圧迫しているのが見えます。
肺の部分も黒い領域が狭くなっています。
…もはや胸の部分は真っ白になって心臓の影がわかりません。胸とお腹を分ける横隔膜の存在も見えないです。
心臓を超音波で撮影した写真です。
心臓の真ん中の壁、心臓の左側の壁がどちらもとても薄くなってしまっています…。
心臓は伸びて縮んで、伸びて縮んでを繰り返す臓器ですが、この子の心臓はほとんど縮めずにいます。
これらの所見からハリネズミの「拡張型心筋症」と診断しました。
残念ながら完治できる病気ではありませんので、
心臓のお薬で何とか余生を機嫌よく過ごしてもらう…といった治療が目的になります。
ハリネズミの心臓病は多いか少ないか言われると、どちらかといえば「少ない」ほうだと日々の診察を通じて感じています。しかし少ないからといって全く無いわけでもありませんので、ハリネズミが元気がない時は常に疑っていかなければいけない病気です。
みなさんのハリネズミ達も、最近回し車をしなくなったなぁ、といった事があれば動物病院で検査を受けることをおすすめします。
井本稲毛動物クリニック
井本 暁
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